■朝は掃除、週末は散歩
平日の早朝、通勤客であふれる西鉄天神駅。よく目を凝らすと、せわしない雰囲気の改札口を抜けて
早足で歩くビジネスマンの姿にまぎれ、ほうきを持ってせっせとゴミを集めるフェレットの姿がある。満員電車に揺られて眉間にしわが寄っていたビジネスマンも、けなげに掃除する愛嬌ある姿に思わず目尻を下げる。
今日もあなたにとって、
ステキな一日になりますように――。そんな思いを届けようと西日本鉄道天神委員会のメンバーが行っている「
Tenjin=HAPPY」プロジェクト。フェレットも昨年末から、このプロジェクトを手伝っているのだという。
週末には、大橋駅から電車に乗って天神までの窓の景色を楽しむことも。乗り込む客を乗車口で迎え、一緒
に座ってのんびり電車の旅を満喫。天神に着くと駅員姿に変身。出発する電車を敬礼で送り、改札口では手を振って利用客を迎える。あるときは率先して警固公園の花壇に水やり。通行人のツーショット写真や握手の要望にも応えながら、天神の街を散歩。疲れたら、市役所ふれあい広場のベンチで休憩し、のんびりし
た週末を過ごす。
通勤途中に見かけた30代販売員の女性は「フェレットに会うと良い事がありそうでうれしい」。60代の会社員の男性は「満員電車から降りてきて疲れているところにフェレットの姿をみるとホッとする」と好評だ。
「フェレットは子ども?大人料金?」と電車に乗り合わせた人からの質問も飛び、隣に座る見知らぬ人同士のコミュニケーションも生まれている。「天神の街にいるだけで楽しくなるようなことをしようとプロジェクトを始めた」と同メンバーの吉中美保子さん。「フェレットが普通に街を歩いているだけで癒やされ、笑顔になる人も多いはず」。
■天神にHAPPYを
フェレットに声をかけると「今日もあなたにとって、ステキな一
日になりますように」とのメッセージや「天神の
HAPPYネタ」が書かれたカードがもらえることも。「ショッピングや食事など目的がなくても『街自体』を楽しめる場所にしたい」と吉中さん。
バレンタインデーにはチョコを購入する姿も目撃され、センター試験や高校受験が行われる日の朝は水鏡天満宮で受験生たちの合格を祈願。
3月には東北支援イベントの手伝いや街で出会った卒業生におめでとうカードをプレゼントする予定とか。意外と多忙なフェレットだが、行動はツイッターやフェイスブックでも発信。「フェレットに会えるかもしれない天神の街を歩く時間を楽しんで」という。
「天神の街でフェレットに会えたら良い事がある。そんな存在になれたら」――。今日も、みんなにHAPPYを届けようと、ほうきとメッセージカードを握って長いしっぽを振りながら天神のどこかを歩いているはず。
取材/編集部 秋吉真由美