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「世界で最も暮らしやすい都市」第17位に輝いた「福岡」
世界の目が向き始めた「福岡」をより魅力的な観光地へ
――福岡市経済振興局集客交流部

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■「住みやすさ」は第17位、「ショッピング」はなんと第1位

 
イギリスの雑誌「MONOCLE(モノクル)」で「世界で最も暮らしやすい都市」ランキング第17位になんと我らが「福岡」の街が輝いた。日本では他に東京、京都が20位以内にランクイン。知名度ある日本の首都・東京(第3位)や日本の代表的な観光地である京都(第20位)に並んでの快挙だ。また、ショッピング部門では第1位に選ばれるなど、世界に向けて「福岡」の地名が急浮上している。

――「知名度から見ると、実質福岡が一番では?」とは福岡市経済振興局集客交流部の吉田宏幸さん。この20位にはコペンハーゲン、パリなど世界の名立たる都市が名を連ねる。「きちんと評価すれば、住みやすい街。住みやすいということは外国人にとっても訪れやすい街。しかし外国人にとっては、地名を聞いたことがなかったり、知名度が低いのはもしかしたら福岡だけかも」という。

「まずは福岡のプロモーション活動が第一。観光客が増えることが福岡経済の活性化につながる」。

福岡でアジアからの観光客へのサービスが進んでいるところはホテルだという。福岡市内のあるホテルは韓国人の社員を2人配置するなど、より直接的なサービスを導入しているという。「日本人のみだと韓国語などのマニュアルがあっても、やはりあいさつ程度の接客。(韓国人スタッフの導入により)どこの店がおいしいのかなど、福岡の生の情報を提供できることが可能になった」(吉田さん)。

次いで各百貨店もアジア観光客の取り込みが本格化している。大丸・福岡天神店(福岡市中央区天神1)は今年4月より、九州の百貨店では初となる外国通貨両替サービスを導入しているほか、外国語での案内チラシも設置している。

新天町では、韓国語、中国語、英語、日本語の4カ国語で「こんにちは」などのあいさつから、「他のサイズはありませんか?」「何名様ですか?」など70の接客フレーズや数字を、イラスト付きで表記した接客マニュアルを作成。スタッフと客が指を差しながら会話できる、利用しやすい構成になっており、各店舗に配布している。同マニュアルは好評で、天神の各商業施設も新天町監修のもと、マニュアルを制作。早速、各施設で導入を開始している。

これらの百貨店、商業施設などがこぞってアジアからの観光客取り込みサービスの導入が本格化してきた現状には、福岡市が中心となって行っているこのような取り組みがきっかけだ。

■観光客対応の充実で福岡経済活性化へ

経済界、民間、行政など29団体が2003年に設立した「ビジターズ・インダストリー推進協議会」。2011年までに年間観光消費額を3,000億円(2006年)から4,000億円へ。外国人来訪数を62万人(2006年)から100万人へ、との数字を掲げ、福岡経済の活性化やアジア交流の促進を目的に活動を展開している。

同協議会の活動内容はまず「プロモーション」。福岡市の知名度向上のためには必要不可欠な部分だ。百貨店、商業施設などのアジア観光客向けの接客レベルの向上を後押しした大きなきっかけとなったのが、同プロモーション活動の一環の中国からのクルーズ船の来訪である。

今年4月、中国からの定員約2,000人の豪華客船が博多港に初入港。5月初旬までの1カ月間で計6回入港し、約1万人の外国人が来福した。また、7月9日から、クルーズ船来訪の第2弾が始まる。10月までの4カ月間で計16回入港するという。「福岡は外国からのアクセスが便利。空港も近く、クルーズ船で来られる距離に位置しているということ、ホテルも充実している。福岡の大きな魅力だ」と吉田さん。

また、韓国・釜山広域市と「アジアゲートウェイキャンペーン2011」を実施。2007年に姉妹都市提携を結んだ韓国・釜山と福岡が核になることがカギだという。圧倒的な数を誇る韓国人観光客。なかでも航路でのインバウンド数が断トツだという。「ここが強み。釜山-福岡間をベースに伸ばしていきたい。九州の玄関口の福岡から九州各県へ。逆に福岡から釜山へ入り、釜山を含む広域東南経済圏へ流れる仕組みを作り、回遊向上を狙う」(吉田さん)。

2の主な活動は「おもてなし」。「ここでは福岡の民間の底力を出してほしい。福岡のプラス面だ」と吉田さん。接客マニュアルのほか、「外国人が一人歩きできるよう、多国語の案内標識の設置やマップ、外国人に対応できるスタッフをそろえるなど環境作りが必要」。しかし、「どこから来て、どこに行って、どこに向かっているのかなどの観光動態が分かっていない部分がある」とも。「ある調査では団体客が多いと結果が出ているほか、実感としてはそうではなかったり。正確な数字を出すため、調査を続けている最中」という。また、観光交流を含め、アジア各国の同じ立場の人材が交流や意見交換なども行い、一緒に街づくりを考えていく、ビジネスパーソンの人材交流活動も展開している。

3の活動は「福岡の魅力と回遊性の向上」。「1部の施設や店に集中すると、プロモーションで呼んだせっかくの経済効果も限定される。滞在期間を延ばし、広く回遊してもらうことが次の課題」と吉田さん。

「街をめぐる観光スタイルへ」――滞在期間を延ばす点で有効に働くのは「いろんな場所での定期的なガイドを配置すること」だという。凝縮された街の魅力を載せたガイドブックのほかに、生の声を届けようと観光ボランティアの募集を始めた。講習会も行い、観光ボランティアとして認定するという。「興味があるところはじっくり滞在してもらいたい。天神は天神の魅力、博多は博多の魅力など。各拠点の魅力、個性がより伝わるのでは」。

交通の便がよいことが逆に九州各県への通過点となりやすい「福岡」ならではの戦略だ。「各地で街づくり協議会も発足してきた。各団体と連携して、福岡の新しい魅力を発信していかなければ」。――各施設の銀聯カードの導入、多国語接客マニュアル配布…福岡が国際化へと走り出した。

■世界都市へ走る裏には課題も

福岡を世界都市へ――ビジョンはつきない。だが、「文化摩擦が生じる外国人が来ることにメリットがあるのか」「マイナス面は認識しているのか」「外国人に限らず、観光客増加で起こる問題は?」――など課題も山積みだと懸念する。

吉田さんは「渋滞、駐輪問題…人の密集で弊害ももちろんある。来てください、来てくださいだけでは福岡の質は上がらない。経済効果のみならず、文化交流も並行して進めていかなければならない」とも。また「目標の2011年までに福岡の知名度を上げ、活気を帯び、よい方向へと切り替えることができれば2011年以降も住みやすさや質の向上へ、よい循環が生まれていくだろう」と期待を寄せる。

昨今、福岡のアジア色は強まる一方だ。あちらこちらで韓国語や中国語が聞こえてくる。ガイドブック片手に歩いている韓国人観光客に100円バスの乗り方をよく問われる。国際化への入り口の扉は開いた――。

記者が韓国に旅行して驚かされることといえば、現地の人の日本語の上手さ。観光地にある店で働く店員はもちろん、一般の人も日本語で案内してくれたりすることもしばしば。「日本から来た」と伝えると「ようこそ」と笑顔で応えてくれる。言葉は通じなくても、それが心からのおもてなしだとひしひしと感じることができる。反対に日本人はそれができているだろうか。日本の福岡という街を選んで、わざわざ足を運んできてくれるアジアからのお客様。その人の旅の思い出に、1人でも多くの福岡人が刻まれるよう、皆で立ち上がろう。

文/編集部 秋吉真由美

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