特集

天神の「人・ひと・ヒト」 Vol.5
「店も舞台に」お笑い芸人・バー経営 下畑博文さん

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■芸人とバー経営を両立

「いらっしゃいませ~。あー久しぶりー」――常連さんや新規の客が次から次に来店する店内。親富孝通りの一角にあるビルの2階の一番奥、階段を上ると「ONE COIN BAR下畑」と大きく書かれたドアが目に入る。


「下畑ん家よってく?みたいな友達が遊びに来てくれる自分の部屋」がコンセプトという約8坪の店内。棚には大量のCDやDVD、カウンター横の壁にかかった大きなスクリーンには下畑さんの趣味のサーフィンの映像が流れる。約50種類のドリンクメニューはすべて1杯500円。景気低迷の昨今、財布にも優しいノーチャージだ。「気軽に家に遊びに来る感覚で来てほしかったので」と下畑さん。「気取った店ではなく、僕がいることを楽しんでほしかったので500円にしました」と話す。「お釣りの準備や計算が楽だし、本業に支障が出るのは嫌だったのでとにかく手間のかからない方法で」とワンコインバーを出店した。


下畑さんの本業はお笑い芸人。よしもとクリエイティブ・エージェンシ―福岡事務所に所属する。1996年に同時期にピン芸人として入った木下貴信さんとコンビ「パタパタママ」を結成。今年で芸暦14年目を迎える。「近所のおばちゃんに『あんた、吉本入んなさい』と言われる子どもだった」というが、大学生の頃はミュージシャンを目指していたという。「ずっとロン毛で吉本に入るなんて思ってもみなかった」。大学時代にテレビ出演の経験もあり、「履歴書に吉本と書くのも面白いなーと思って大学卒業と同時に吉本に入っちゃったんです」。


「将来の夢は面白いかなーと思って、インタビューでは中洲にスナックを出すことと答えていた」という下畑さん。「売れた芸人は店を出すイメージがあって(笑)本気ではないけど『スナック下畑』とか自分の名前が付いた店を出したいと答えていた」。一昨年、ひょんなことからそれが実現する。


■秘策「コミックヨシモト方式」とは?

「いや~それも2週間前まで店を出すなんて思ってなくて」。同所で以前、飲食店を経営していた知人から、店舗経営者を探してほしいと相談を受け、「じゃあ僕やります」と手を挙げたのがきっかけ。それから4日後にプレオープンというスピード出店であれよ、あれよと夢が実現したのだという。1カ月間、友人や知人を招き、内装をしながらの営業を始めた。「完全に勢いです(笑)3カ月くらい様子を見て、難しそうだったらやめてやろうと思ってましたよ。これを僕らの間では『コミックヨシモト方式』と呼びます」。


「コミックヨシモト方式」とは、全国でキャンペーンを行ったにもかかわらず、半年で廃刊したという伝説を残す、過去に吉本興業が出版した漫画「コミックヨシモト」にもじって、芸人仲間の間で生まれたもので「キャンペーンのTシャツを配り終える前に廃刊して、事務所に大量のTシャツが残っているという伝説を残しました(笑)『コミックヨシモト方式で行くから大丈夫』が皆の合言葉になってます!」とか。


「下畑さん家」では、終始客の笑い声があふれている。「コミックヨシモト方式」の気楽な出店も下畑さんのテレビそのままの明るい人柄のせいか、「気付けばもう2年。サラリーマン、年配の方や若い子まで客層も広く、芸人・下畑を知らない人も多く、博多華丸大吉さんの大吉さんが店にいると『マスターも芸人?』と驚かれることも。どうりで話が面白いと思いましたよーってほめられました(笑)」。


飲食店でのアルバイト経験もあるが、出店が決まるとカクテルの本を買って猛勉強したという。「シェーカーは今でも照れます。なんかマスターぽくて、ミニコントが始まったみたいで照れるので、こうします(足を広げて頭の上で振る動作)」と照れ屋な一面も。


■「店も舞台。勉強になります」

「今後の目標は?」と問うと「とりあえず芸人として成功したい。福岡にいながらのスタイルで全国に発信していきたい」とマスターから笑いを志す芸人の目に変わる。「ラジオもテレビも好きだけど、生でお客さんの反応が見られる舞台が好き。店もある意味、舞台。店での接客が勉強になってます」。


「どっちもライブ感がある。毎日、下畑の単独トークライブやってるんで、僕の話聞きに来てくださいって感じですね」。ソファ席に座っている客に、カウンター席が空くと「こっち来ませんか?」と誘うマスター。客同士の会話に自然に入っていく。サービス精神が旺盛というだけではなく、「話に入りながらも、気づいたら自分の話をしている」と笑う下畑さん。「苦労はない。仕事が優先ですが、東京帰りできつくでも戻れる日は(店を)開けてますから」。「いつでも楽しみたいんですよー。いつでも」との言葉が印象的だった。


福岡を訪れた芸人仲間も多数訪れる「下畑さん家」。単独トークライブが間近で見られるカウンターは、今日も500円を握りしめた客であふれている。


文・写真/編集部 秋吉真由美



◆「ONE COIN BAR下畑」
福岡市中央区天神3-6-10天神エイトビル2階  TEL 092-713-1522
営業時間は21時~翌3時
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