■「サラ忍マン」参上
忍者頭巾にスーツ姿、ビシッと決めたネクタイの色はこだわりの
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ピンク。「サラ忍マン」と名乗る人物の正体は、福岡市内の
IT企業に勤める田口健太郎さん40歳。営業部統括マネジャーとして真面目に働くサラリーマンだ。至って真面目な営業マンだった田口さんだが、数々の偶然が重なり、忍者の道へと導かれるように頭巾をかぶることになる。
転機は昨年
4月、2児のパパでもある田口さんの4年に一度の家族旅行。行き先は佐賀県の嬉野温泉。嬉野市
の歴史体験型テーマパーク「元祖忍者村肥前夢街道」もコースに盛り込んだ。忍者にピンときた田口さん。実は以前の職場の上司が「忍者ハットリくん」に似ていたことから、「辞めるまでに頭巾を一度でいいからかぶせてみたい」と手作りしていた頭巾があったことを思い出す。「これはちょうどいい!」と田口さんはその頭巾をかぶって忍者村へ。2人の娘の冷たい視線をよそに「こんな客は初めてだ!」と忍者村で手厚い歓迎を受けることとなる。
頭巾をかぶっていること以外は至って普通の幸せいっぱいの家族旅行。そんなアットホームな家族旅行の写真を自身のフェイスブックに載せた途端、本人も驚く反響につながる。
■初のディナーショーも
「
excellent!」「
very cool!」などと英語で書かれたコメント
やメッセージ、アメリカやイギリス、フランス、ブラジルなど、次から次へと海外から友達申請が殺到。もちろん国内の反響も大
きく、タレント事務所からスカウトまでくる始末。「世界では忍者が求められているようだ」と田口さん。「気づいたら1年近く頭巾をかぶっていた」と振り返る。
天神を歩くサラ忍マンを見かけたらラッキー。基本的に活動の場はフェイスブック上のみだが、ファンの要望に応え、昨年12月には自身初のディナーショーを開催。忍者ショーや歌謡ショーなど盛りだくさんな内容で約100人の忍者ファンを魅了したのも束の間、予想以上の反響で2月16日に次回公演も決まった。
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■サラ忍マンの素顔に迫る
ディナーショーで披露する、個性が際立つ忍術も人気の秘密だ
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。「義理人情やマナーを伝えるのも仕事」と言い切る。得意とする忍術は「名刺手裏剣」。サラ忍マンいわく「可憐な仕草で名刺を差し出す。商談成立しやすくなる忍術」なのだという。「その美しさは日ごろの鍛錬の成果によるもの」とも。
もう一つ教えてくれた忍術は「平謝りの術」。「どんなトラブルも穏便に済ます
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ことができる」らしいが、
1日1回しか使えないのだという。理由は「嘘くさくなるのでドクターストップがかかってしまう」とのこと。
フェイスブックに掲げた格言にも心が動かされる。「跳べない頭巾はただの布だ」「困難を乗り越えるにはちょっとした勇気と頭巾があればいい」「頭巾の乱れは心の乱れ!」など。ちなみに、好
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きなものは「都会の優しさ」「楽しい修行」のほか、原点はサラリーマンだという顔がのぞく「終身雇用」「年功序列」「五時から男」。苦手なものは、「都会の冷たさ」「つらい修行」「ノルマ達成」「経費削減」らしい。
趣味は、トライアスロンとフルマラソン。「年末の『SASUKE(サスケ)』(TBS系列のスポーツ番組)に向けて勝手に練習している」。好きな歌手は八代亜紀。「カラオケの十八番は『サラ(舟)唄』」。今行きたい場所は「南の国」。気になる世の中のニュースは「雇用問題」。忍者らしからぬ不安そうな目で「明日は我が身…」とぽつり。
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■人をつなぐ架け橋に
頭巾を脱いだら娘の笑顔に目尻が下がる
2児のパパ。
「仕事の帰りも遅く、全然なついていなかった娘たちも、サラ忍マンになってちょっと気にしてくれている」と目を細める。背中に
漂う哀愁。「悩んでいるだけでは生まれない。自分で変えていかなければならない」と目を光らせる。「私は幸運にも頭巾というアイテムを手に入れた。世の中の肩身の狭いお父さんたちに勇気を与えたい」と話す。
忍者村でのショー出演依頼やテレビ出演、海外メディアにも取り上げられるなど、各方面からひっぱりだこのサラ忍マン。今後の目標を問うと、「人と人をつなぐ『架け橋』として、世界に忍者を発信したい!」と鼻息荒く答え、笑顔を見せると「にんにん=卍!」と、瞬く間に天神の雑踏へと消えていった。
取材・文/編集部 秋吉真由美