福岡市は7月7日、2006年(第17回)福岡アジア文化賞受賞者4名を発表した。
同賞は、アジア固有で多様な文化の保存と創造に顕著な業績をあげた個人、団体を表彰するもの。アジアの文化価値を認識し、その文化を守り育てるとともにアジアの人々が相互に学び合いながら、幅広く交流する基礎作りに貢献することを目的としている。地方都市が同賞を設ける意義について山崎広太郎福岡市長は「地方都市で賞を設けるのはどうかと疑問に思ったこともあるが、1989年にアジア太平洋博覧会を開催して以来表彰を続けている。これからも今の形を守って続けていきたい」と話す。
対象地域は東アジア、東南アジア及び南アジア地域。今年は28カ国の290名・団体の中から、大賞=中国の作家である莫言(モオ・イエン)さん、学術研究賞=モンゴル国を代表する歴史学者シャグダリン・ビラさん・日本の歴史学者の濱下武志さん、芸術文化賞=パキスタンを代表する民族文化保存の専門家アクシ・ムフティさんを選出した。
大賞に選ばれた莫さんは、中国の都市と農村の現実を独特のリアリズムと幻想的な方法によって描いた作品が特徴。代表作は、「酒国」「赤い高粱(コーリャン)一族」など。「文学を通して文化が持つ豊かや多様性、そして人間社会の複雑さや可能性を示し、アジアの文化意義を世界に示す存在」と賞されて大賞に輝いた。
学術研究賞は、アジアを対象とした学術研究における優れた成果により、アジアの理解に貢献した個人や団体を顕彰するもの。同賞に選ばれたビラさんは、歴史学を中心にモンゴル研究全般にわったって大きな業績をあげ、世界規模での研究の組織化や普及に大きな貢献を果たしてきた活動が、濱下さんはアジア全体を見据えた地域像の構築に先駆的役割を果たしてきた活動が、それぞれ評価された。
芸術・文化賞に選ばれたムフティさんは、パキスタンに生きる有形・無形の文化伝統の収集・保管・記録保存や普及活動を行なう「ローク・ヴィルサ(国立民俗伝統遺産研究所)」の創設者である一面もあり、パキスタンを代表する著名な文化指導者として、民族文化の保存と発展に尽力するほか、国際的にイスラーム文化の保存や活用、普及に大きく貢献している活動が評価された。
授賞式は9月14日、福岡国際会議場(博多区石城町2)で開催。各賞受賞者による市民フォーラムが9月16日、17日にアクロス福岡(中央区天神1)で開かれる。