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地域に根差した施設に
アクロス福岡、開館20年目へ

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■「アクロス山」は天神の顔

1981(昭和56)年に東公園に移転した福岡県庁舎跡地に1995年に誕生した同館。緑の公園として残そうという声もあったというが、福岡の経済の中心地である立地にふさわしい施設を、と国際文化情報の機能を持たせることが決まったという。基本計画は日本設計とアルゼンチン生まれの建築家エミリオ・アンバースさんが手掛けた。

うっそうとした緑で覆われた天神中央公園に面するステップガーデンは、施設コンセプト「緑との共生」そのもの。「アクロス山」と呼ばれ、市民や観光客、都会の中に自然を求めてやってくる野鳥…それぞれの憩いの場となっている。「開館当初より生い茂った緑のおかげで今では海外の方にも印象的な建物に成長できました」と支配人の藤本廣子さん。

高さ60メートル、2階~14階の5400平方メートルにも及ぶ屋上緑化面積を誇り、開館当初は7637000本の樹種を植栽。今では、補植や野鳥の支えも手伝って約1205万本と大幅に増えている。散水方法は、地下4階の貯水槽に最上階の降雨水を貯め、スプリンクラーで散水する仕組みだ。

「開館当初はまだ緑も少なく、ステップガーデンの現代的な部分とのバランスが斬新すぎた印象を受けた」と藤本さん。「20年経過した今は都市と自然がよく調和しているなと実感しています。大好きな施設ですね」と話す。「昼の時間帯には健康の為に歩いているビジネスマンも。四季折々の花や紅葉も見られるんですよ」。

20周年記念事業も続々

館内施設は、世界有数のフルオーケストラによるコンサートをはじめとする年間約100公演が行われる福岡シンフォニーホール、6カ国語の同時通訳が可能な国際会議場、変動式の客席と舞台が特徴の円形ホール、文化芸術の企画展などが開かれる交流ギャラリー、福岡の伝統工芸を展示・紹介する匠ギャラリー、九州・山口やアジア地域の情報を集めて提供する文化観光情報ひろば、福岡県パスポートセンター、飲食物販テナントなどで構成する。

「当初のコンセプトには福岡シンフォニーホールの構想はなかったらしい」と藤本さん。多目的ホールとしての計画があったが、よりグレードの高い音楽専用ホールを要望する声を受け、今のホールが誕生したという。

20年で2500公演、約300万人が来場した同館の目玉施設・福岡シンフォニーホールでは今年、記念事業が続々と予定されている。

グスターボ・ドゥダメル指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団、ワレリー・ゲルギエフ指揮マリインスキー歌劇場管弦楽団、ズービン・メータ指揮イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団などによるコンサートを予定。満20歳となる来年429日には、同ホールの監修を務めた福岡市出身のヴァイオリニスト・安永徹さんとピアニスト・市野あゆみさん、九州交響楽団による「アクロス・バースデーコンサート」を開催し、20周年事業を締めくくる。

また、「若いうちから本物を体感してほしい」と青少年の育成を目的にした無料の公開リハーサル企画も実施する。

子どもたちに本物の音楽や楽器に触れてもらおうと学校を巡る取り組み「学校キャラバン」、美術館では展示テーマに沿った音楽を演奏するコンサートを開くなど館外での活動も活発だ。「福岡県民をはじめ、これからもっと増えるであろう海外からの来街者に愛していただけるような魅力ある文化事業を提供していきたい」と藤本さん。

20周年のキャッチコピーは「感動はぐくむ未来へ」――。藤本さんは「これからの20年も皆さんと感動を共有できるような、より一層地域に根差した施設を目指したい」と目を光らせる。

取材・文/編集部 秋吉真由美

アクロス福岡

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