特集

中古本事業の拠点に
ツタヤ天神駅前福岡ビル店

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■中古本事業を本格化

大手書店「丸善」跡であることや周辺の大型書店との差別化も狙い、ツタヤの中古本事業の拠点との位置付けで店を構えた。総売り場面積は964坪。DVDやCDなどのレンタル、新刊書籍販売なども行うが、中古本に重きを置いた業態で、新刊約6万冊に対し、文庫や雑誌、専門書などの中古本は約30万冊をそろえる。利用者層は、20~30代が中心だが、九州最大級の品ぞろえで時代小説など幅広いジャンルの本が充実していることから、50~60代の利用も目立つという。


中古の売り上げ増を狙い、新刊と中古を並べた陳列も始めた。「料理」「ファッション」などジャンル別に並列展開し、利用者は中古と新刊を見比べながら選ぶことができる。「文庫」コーナーも新刊と中古の棚を向かい合わせに展開。店頭では、中古の棚に利用客が集中する人気を見せている。「中古本に抵抗がある人も中にはいるのでは」と問うと、「女性は敬遠する傾向にある」と同店ストアマネジャーの穴沢純一さん。中古本でも状態が良いものを集め、清潔な店舗作りを心がけている」という。
「新品だけをそろえる書店は厳しいが、図書館や中古本の利用冊数を含める本全体では数字が伸びている」と穴沢さん。「新品より安い方を選ぶ傾向が強い。今後はその傾向に対応できる本屋が残っていくはず」。


ツタヤでは現在、直営では5店舗、加盟店合わせて24店舗が「ecobooks」を展開。買い取り宅配の窓口でもある同店は、ツタヤの中古本事業の拠点として率先して買い取り強化に走る。来年にかけて同店だけでも中古本を35~40万冊に増やそうと、買い取り実施のPRも兼ね、さまざまな活動を展開している。


■買い取りで寄付も

8月からは買い取りの仕組みを使った寄付活動を開始した。夢実現や自立を支援する一般社団法人「ストリート・プロジェクト」が行う寄付本プロジェクトに賛同したもので、大学や企業、病院などに寄付本BOXを設置し、同社が回収、査定金額を同団体へ寄付する仕組みだ。「今後も寄付本BOXの設置先を増やしていき、買い取りの強化につなげたい」と話す。


中古本事業の先には、本のある生活を楽しんでとの思いも込める。店内の一角にあるカフェスペース「カフェ・ド・クリエ」では、購入前の本を自由に読むことができ、連日にぎわいを見せている。「『ブック&カフェ』という業態をメジャー化したい」と穴沢さん。「本を良い空間で読んでほしい。必ずしもそれが僕らのカフェだけでなくてもいい」と天神エリアのカフェに同店の中古本を無料で設置する活動も開始した。年内に20店舗以上の展開が目標という。「街にブック&カフェの空間がたくさんできれば」という。



――新刊とは違う、独特の風合いを持つ年季が入った本との出会い。出版直後ではない、時が経った今のタイミングで出会うことにも意味を持つのだろう。秋の風がかすり始めた今日、知らない誰かと時を刻んだ本に手を伸ばしてみては。



取材・文/編集部 秋吉真由美




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