特集

天神、仕掛け人シリーズVol.2
We Love天神協議会事務局メンバー、西日本鉄道天神委員会 池田明子さん

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■ピアノ下手が原因(?)で街づくりメンバーへ

「子どもが好きだから、保母さんに向いてるかなぁと思って…」――。天神を右に左に日々、走り回るキャリアウーマンは実は、短大の幼児教育科を卒業、幼稚園教諭の資格を持つ癒し系。保母さんへの道を歩むはずだった…?が「ピアノと歌が下手(笑)。ピアノなんて右手と左手が一緒にしか動かないし、子どもたちと遊ぶことはできても教育はできないかも…と思って」と笑うのは、西日本鉄道(以下、西鉄)天神委員会に所属し、2006年に発足した天神地区の企業・団体などから成る天神エリアマネージメント組織「We Love天神協議会」事務局メンバーでもある池田明子さん。学生時代にしていた飲食店でのアルバイトが縁で短大卒業後、西鉄のグループ会社でソラリアプラザの運営を手がけていた「ソラリアクリエイト」に入社することとなる。

入社当時は出店者で組織される商店会の事務局に所属。2年後に販売促進の担当となり、販促企画を中心にテナントの相談などを行っていた。販促担当の仕事をしつつも、天神の魅力向上を目的に、渋滞緩和、集客などの問題に取り組む、2001年に誕生した西鉄の横断組織「天神委員会」の警固公園活性化小委員会メンバーとしても活動。警固公園のイルミネーションなどをはじめとする「天神のクリスマスへ行こう」キャンペーンの活動などを行ってきたという。

クリスマスが近くなると警固公園が幻想的な空間へと変わる。毎年、もうこんな時期か…と1年の早さを感じさせてくれるイルミネーション。今や、「天神のクリスマス」の代名詞となった警固公園だが、毎年恒例の場所になったクリスマスの警固公園の誕生の裏側には、何人もの汗が流れている。

池田さんも、輝くイルミネーションの裏で汗を流した一人。「初めの頃は何をどうしていいかわからず、手探りの状態。今では、当たり前に毎年飾られるイルミネーションも、何もないところからのスタート。どこに何を置いていいやら…。大変だったけど楽しかった」と振り返る。

一方、販売促進の企画会議で「(天神は)ビルの中はきれいだが、一歩外に出ると排気ガス、渋滞などで汚い。その辺はどうにかならないのか」という声を聞く。この客観的な意見と、自身が手がけてきたイベントの経験から、天神の「まちづくり」への本格的な関心が生まれてくる。

2006年にソラリアプラザの販促担当から、西鉄の天神委員会へ異動。同時期に「We Love天神協議会」が発足。同協議会のサポートが天神委員会の業務の1つであることから、池田さんも事務局の中心メンバーとして正式に街づくりへかかわり始める。そのころから「『まちづくり』への認識が確かなものになった」と話す。

■ボーっとしながら眺める警固公園が好き

天神で好きな場所は「警固公園」――。「学生時代は特に、ビル内の吹き抜けの空間が好きで、ソラリアの2階の窓から警固公園をボーっとみるのが好きだった」という。そのころからよく利用し、見慣れている警固公園への思い入れは人一倍強く、治安の問題を懸念する。「電飾が壊されたりしたことや、落書きを消しに行ったこともある。悔しくてガッカリした」と当時を振り返る。

だが、2006年からの同協議会の活動など、各団体が続けてきた取り組みによって、天神の利用者や来街者の意識も目に見える変化が出てきたという。「毎月14日に天神地区で働く人が集まり、出勤前に清掃活動を行なっている天神クリーンデーは、人が人を呼び、今では120~130人が参加してくれるようになった。清掃も拾いがいがないくらいに、ゴミも減ったように感じる。落書きも消すところがない」と話す。

清掃に初めて参加した人からは、次の日から道端のゴミが気になるという声も上がるという。「たぶん、そんな人は天神での清掃がきっかけで、旅行先や他の地区でも街を思いやる意識が継続されているのでは。街全体で、こんな意識が広がりつつある」と話す。

■多忙な日々の活力は?

天神を舞台に日々、同協議会の事務局メンバーとして膨大な量の仕事をこなす池田さん。「最初に出会った先輩」と慕う同協議会メンバーの天野裕子さん(写真左)は、池田さんについてこう話す。「好奇心旺盛。どんなに忙しくても、きつくても顔に出さず、いつもニコニコ。だから周りが奮起できるんです。周りも池田さんが呼んでるなら…と、スケジュールの確認もなしで参加の手を挙げてしまう。街づくりへの協力者がどんどん増えている背景には、池田さんの人柄も理由の一つでは」という。

「イタリア人です。ボ~ノ~」とニコニコしながら話す池田さん。主な原動力となっているのは、大好きな「パスタ」。「主食がパスタ」と断言するほど好きで、週2日の休みのうち、1日は必ず、足を運ぶというパスタ屋さんがあるとか。「時間はないが、(仕事とプライベートの)メリハリは大事にしている。どんなに忙しくても、行かなきゃ行けない遊びには行く!」と池田さん。

そのほか、歴史ものやエッセイなど何でもジャンル問わず読むという本の虫でもあり、「運動しようと思ってスニーカーを購入したけど、時間がなくて置きっぱなし…(笑)」と明かす、飾らない一面も。天神を動かすには各方面の情報通でなければと「毎朝、新聞3紙を読みあさってます。芸能面ばっかり(笑)」と笑うが、天野さんは「朝は忙しいのに、本当に尊敬します。池田さんは、アンテナがあちらこちらに向いてる」と尊敬の眼差し。

■天神をテーマパークへ

「天神が人と人の出会いの場であってほしい」――。「隣の人を知らないではなく、仲良くなって、誰でもあいさつできる関係を目指したい。それは、来街者にとっても心地よいことであり、おもてなしにもつながる」という。

「人とのつながり」への取り組みは具体的に行われている。毎月朝の時間帯に実施している「天神クリーンデー」では、参加メンバー同士のコミュニケーションを増やそうと、今年9月、初めて清掃を夕方に実施。その後、親睦会を行うことに。

残念ながら雨天により夕方清掃は実施されなかったが、親睦会は予定通り実施。約70人が集まり、交流を深めた。「天神にかかわる人って、飲んでも天神を語り出すんです。コミュニケーションの場を増やすことで、少しずつ、つながりが広がっていくはず」と期待を寄せる。

「自分のことよりも相手のことを考える人」(天野さん)という、今の池田さんの信念を作り出したのは、販促担当時代の上司のこの一言。「テナントは売り上げを上げようとして相談してくる。相談にはプラスにして返せ。まず、頑張る姿を見せなさい」――。「そう言われ続けてきて、昼間にテナントの相談を受け、夜にしか自分の仕事ができなかった時期も」と明かす。

「苦労はない」と断言する天神ウーマン・池田さん。「活動しているとき、仲間と飲んでいるときが楽しい」という。「やらずに後悔したくない。やって後悔しよう。とりあえずやってみようと考える。だから買い物してしまう…(笑)」とも。相手を第一に考える性格が天神地区の横のつながりを広げる大きな役目を果たしている。

一人一人の出会いで結ばれた手によって、一歩ずつ、日々積み重ねられていく「天神」――。「天神をテーマパークやモールのような存在にしたい!」。今日も、その好奇心に惹かれて集まった人たちの手が重なり、街は作られていく。

文・写真/編集部 秋吉真由美

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