■統合メリットは?
10月1日に誕生した「岩田屋三越」。両店では統合記念「天神家族祭」を開催するなど、統合メリットを存分にアピールしている。
年間利用額に応じて、翌年の優待率が上がるMICARDの相互利用を開始したほか、「岩田屋は生鮮食品、三越は菓子・総菜関係というお互いの強みを生かし、回遊性が期待できる」(梁井さん)と共通の食品フロアポイントカードも発行し、買い回り効果を見込む。
「天神家族祭」では両店の人気ブランドの食料品を集めた共通福袋などをそろえるなど統合メリットの訴求を図った結果、統合から半月で入店客数が岩田屋は前年比110%、三越は105%を記録した。「三越の客層は50代が中心。岩田屋は50代プラス20~30代でバッティングはしないが、統合をきっかけに両店で買いまわりをする方が増えた」と梁井さん。結果、売り上げも入店客数に比例しているという。
ベビーカーや車椅子、ショッピングカーの貸し出しサービスは地下通路「きらめき通り」を行き来できるよう、両店での利用に変更し「年配の方にも好評」。また、両店の買い物をまとめて、指定の時
間に駐車場や案内所で受け取れる「買い物ポーターサービス」も強化。同サービスについて三越は
1日数件だった利用が10倍の件数に跳ね上がったという。11月よりグループ店舗のネットワークを生かし、両店の購入品を久留米店やサロン13店舗で受け取れるサービスも行う。
物流の面でも倉庫を1カ所にまとめ、効率化。売り上げが伸びない中でも、人件費も削減し利益を拡大する方針。「今までライバルでやってきた分、営業方針の一本化にあたり、もちろん意見のぶつかり合いもある」と梁井さん。「ライバル関係は良い意味で残し、良い緊張感を持って、お互い情報交換して向上させていければ」。共同仕入れによる目玉商品の強化や一方だけでは難しかったオリジナル商品も展開していく予定という。
■年末商戦にも両店の強み生かす
歳暮やおせちの受注も始まり、年末商戦も本格化。統合後初の年末商戦ともあり、
10月にはライオン広場(天神2)で「おせち・クリスマスケーキ」「歳暮ギフト」の内覧会を開き、無料試食会を行った。各店とも一般向けの内覧会の実施は初の試み。
人気ケーキショップの商品を双方で販売するほか、おせち・歳暮は配送区域を拡大した。商品構成は福岡の老舗料亭のおせちなど、岩田屋は地元に特化したものを、三越は全国展開の強みを生かした品ぞろえを展開し、お互いの特徴を生かして商戦へ挑む。
■来春の集客力に期待
来春には九州新幹線が全線開通し、新博多駅ビルが誕生する。両店では、新ブランドの導入などのリニューアルで
顧客囲い込みへ。「百貨店『博多阪急』の影響も大きく受けるだろうが、来街者が博多でとどまることはないので回遊性が向上し、集客力が高まる」と梁井さん。また、外国人観光客の
増加に伴い、9月には岩田屋新館6階に設けていた免税手続きカウンターを同1階に移動させた。今後、外国人向けサービスも強化していく。
「福岡パルコ開業時も岩田屋の入店客数は増加。博多駅のほか、近隣にはバーニーズニューヨークの出店も予定されているが、福岡の魅力が増し、商圏の拡大が見込める」と期待を寄せる。
来春の博多駅開業、来秋にはバーニーズニューヨーク――ますます盛り上がる福岡の動向に今後も注目したい。
取材・文/編集部 秋吉真由美