特集

街がキャンパス
「福岡テンジン大学」が開校2周年

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■誰でも学生に

街全体を「キャンパス」とし、学びをきっかけにしたコミュニケーションの輪を広げることを目的にしたもので、2006年に東京都渋谷区が拠点の「シブヤ大学」が初めて開校。今では「京都カラスマ大学」「大ナゴヤ大学」など姉妹校が続々と開校した。


福岡テンジン大学の学長・岩永真一さんは福岡市出身。天神を中心に清掃などの活動を行うNPO法人「グリーンバード福岡」のメンバーとして、仕事の合間に清掃や打ち水など街を主体にした活動に参加していた。そんなある日、グリーンバードの発起人が「街での学び」をテーマにした「シブヤ大学」を立ち上げることを耳にする。「ただただ、面白そうと思って…『じゃあ僕がテンジン大学作ります』と口走ったことが始まり」という。


その決心から4年、2010年度の福岡市とNPO法人グリーンバード福岡チームの共働事業により設立。今年度からはNPO法人としての活動を始めた。授業は毎月第4土曜を中心に開講。福岡を拠点に活躍するクリエーターや経営者らが講師を務め、今までで約100回の授業が開かれた。授業にはホームページ上で学生登録をすれば、誰でも参加できる仕組みで入学費や授業料は原則無料。学生の登録は10月末現在で約3000人に上る。


■個性豊かな授業が続々

授業はどれもユニークで、バラエティーに富んだものばかり。事務局メンバーらが交代で授業コーディネーターを担い、企画や当日の運営を行う。「テンジン大学らしさを出した授業でないと意味がない」と面白さだけではなく、福岡に関連した内容を盛り込むことが授業作りのルールという。


過去に実施したのは、今年7月に全線開通した福岡都市高速道路「環状線」に開通前にチョークで絵を描く授業や、コウモリなど天神に住む生き物の観察会、長浜の鮮魚市場の朝せり見学、オープントップバスに乗って早朝の天神を巡る授業などさまざま。授業中に恋をテーマに短歌を作り、作った短歌をイメージしたカクテルが飲食店の協力によって商品化したこともある。


「大学の知名度も上がり、今では各授業の希望者が定員を超える人気でほとんどの授業が抽選制」と学長。参加者の年齢も幅広く、15歳から74歳の参加者が一つの授業を受けたこともあるという。「授業中にグループ分けをする場合もあるが、女性のみのグループに一人おじいちゃんが混じっていることも(笑)。でもすごく楽しそうでほっこりします」。世代を超えたコミュニケーションの場にもなっているようだ。


■新たな動きを期待

「テンジン大学を通じて知り合い結婚した方や、縁あって転職した方など大きな広がりを感じる。大学をきっかけに新しい動きが生まれた話を聞くと、やってきて良かったなと思います」。今後は、福岡都市圏の郊外で授業で学んだことを生かす人や、新しいプロジェクトを立ち上げる人が出てくることに期待したいという。


今月も11月16日に曹洞宗瑞鳳山東林寺で朝粥付きの座禅体験、同21日には新天町の開業当時から出店している「しばた洋傘店」の3代目・柴田嘉和さんが講師を務める新天町の楽しみ方講座など、オリジナル授業が続々と予定されている。


「学長の仕事は街への恩返し。グリーンバードの活動を通して、(自身も)人脈も広がったし、仕事以上にスキルアップもできた。街に育ててもらった気がする。福岡テンジン大学が皆のそんな場になれば」と話す。





取材・文/編集部 秋吉真由美




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