特集

本好きが集まる1カ月
福岡の本の祭り「ブックオカ」

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■本好きが集まる1カ月

書店や出版業界の活性化を目的に始まった「ブックオカ」。今年で7年目を迎え、福岡の秋を代表するイベントに成長したが、けやき通りの本屋「ブックスキューブリック」店主の大井実さん、福岡市の出版社「石風社」の藤村興晴さんらが集まった、ある日のお酒の席での雑談から生まれたもの。2005年に参加者が段ボール箱ひとつ分の古本を売る、東京の不忍(しのばず)通りで開かれた「不忍一箱古本市」をヒントに「面白そうだから福岡でもやってみよう」と動き出した。


早速、知り合いの本好き仲間に声をかけ、実行委員会を発足。「散歩や古本…けやき通りにぴったり」とまずは一箱古本市の準備に取り掛かるが、ここはやはり本を愛する者たち。「県内の書店を巻き込むイベントを」「本に出てくる料理を再現したい」などなど…本を主体にしたイベントのアイデアは止まらない。――「よし、全部やっちゃおう!」


「総合ブックフェスティバルという形になりました」と大井さん。「けやき通り一箱古本市」を筆頭に、あるギャラリーではパパだらけの読み聞かせ会が開かれ、市内のカフェには想像でしか食べられなかったあのメニューが登場するなどユニークな企画が満載に。約半年の準備期間にもかかわらず、初の「本の祭り」には開幕前から地元メディアの取材が殺到し、低予算ながらも宣伝効果は抜群で会場は大盛況。初開催にしてイベントは大成功に終わった。


2年目には、特製文庫カバーを制作。福岡県出身のリリー・フランキーさんがイラストを手掛け、イベント期間中、県内書店約400店で60万部が配布された。3年目には絵本作家・荒井良二さんのイラストが、翌年には漫画家の西原理恵子さん、5年目には宇野亜喜良さんなど大御所の名がずらり。県外からも問い合わせがあるなど毎年人気を集めている。


■作家によるトークイベントや特製ブックカバーの配布も

今年のブックオカは、メーンイベントの「一箱古本市」(11月3日)をはじめ約20のイベントが開催される。11月2日には、3年連続のブックオカ参加となる作家の角田光代さんと今年、第146回芥川賞を受賞した田中慎弥さんのトークイベントがそれぞれ開催される。さらに、毎年書き下ろしイラストを印刷した特製ブックカバーも今年は趣向を変え、角田さんと田中さんが「私が惚れた主人公」をテーマに書き下ろしたエッセイを印刷。「読ませるブックカバー」になるという。

また、書店の連携もブックオカの魅力。書店員が選んだ文庫本を店頭に並べる「激オシ文庫フェア」を展開する。「自分がすすめる本が売れればうれしいし、現場の若手書店員も張り切ってやってくれているようだ」。


「本と人と街。本を通じて、自分の街をもう一度見つめるきっかけになれば」と大井さん。「人生短い。人との出会いと同じで、どれだけ良い本との出会いがあったかどうか。そんな本に一冊でも会える機会をブックオカで作りたい」。


「本好きを増やす。街を面白くする。これからブックオカが10年、20年と続いていくと、ブックオカによって人生が変わったという人が出てくることもあるかもしれない。街に読書カフェが増えたり、『古本屋を始めちゃいました』という人…そんな人が出てくるのが夢かな」。


――今年も、特製文庫カバーとともに本棚に並ぶ本がまた増える予感。ページをめくるだけでさまざまな人生を体験できる本。気に入ったセリフやフレーズは何度も繰り返し読んでしまう。今日も、ちょっと成長したつもりで電車を降りる。



取材・文/編集部 秋吉真由美



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