■413年前からやってきた
黒田官兵衛(以下、官兵衛) 今日はよろしく。現代の世のその「取材」とやらだが、注目していただいておるようじゃな。
長政 おお、ありがたいことにのう。
銀時 大河ドラマというものもあり注目度も上がっているようで、官兵衛様と長政様に皆注目しておられるようじゃのう。
と、笑顔で迎えてくれた3人。黒田官兵衛(下写真中央)と長政(同右)、「子どもと酒が好きで、二人を笑わかせて元気を与える。二人の盛り上げ役と元気印なんじゃ」と笑顔を見せる銀時(同左)。3人は、福岡市民や観光客らに「元気」「勇気」「自信」を授け、福岡の街を盛り上げようと「福岡黒田武将隊」を結成し、「年数を入力して…わしも衝撃的で覚えておらぬ」(官兵衛)という「時間旅行」をしたらしい。関ヶ原の戦いが終わった413年前から平成の福岡に降り立った3人は、県内外を飛び回り多忙な日々を送っているという。
――そんな3人に現代の福岡の印象を聞くと、
官兵衛 413年前とは違って、すっかり太平の世になったのう。人も増
えて、皆が笑顔でおるからうれしく思うぞ。
長政 町並みもすっかり変わってしまったが、福岡城が跡地として残されておったり、崇福寺には我々の墓があったり、人が歴史を大切にする心を忘れることなく過ごしておるのは、いくら時代が変わったとはいえ、うれしいのう。
官兵衛 福岡は海と山が近く、新鮮な食べ物もあるし、人も優しい。触れ合いの心を持っておるから、非常に住みやすい街であり、他藩の者も迎え入れられやすい街じゃな。
長政 店の数がはるかに増えておる。一つの大きな建物… おぉ、しょうぎょうしせつ
(商業施設)というのかのう。欲しいものが手に入りやすい世になった、非常に素晴らしいぞ。
銀時 おぉ、本当に高い建物が増えたのう。あと、福岡独特の食文化が根付いた「屋台」というものがあるらしいのう。わしゃ行ってないが、官兵衛様と長政様は行かれたようで。
――どうやら平成の福岡に戸惑いつつも、ずいぶん街を満喫しているらしい。
官兵衛 「博多ラーメン」というものを食したんじゃ。店の客人との距離も近いし、夜風を感じながら食すと、より一層おいしく感じられるもんじゃな。
長政 おいしかったのう。あんなに美味いものがあるとは、わしらの時代に持ち帰りたいのう。ラーメンの始まりの歴史が変わってしまうかもしれんが。ハッハッハ~
官兵衛 それはそれで困ってしまうがのう…
長政 志賀島じゃったかのう、「金印カレー」という異国の食べ物や太宰府では梅ヶ枝餅もいただいたぞ。
官兵衛 おいしかったのう。食ってばっかりじゃのう。食いしん坊じゃのう(満足気)。
■現世の生活には苦労も
よほど、現代の福岡グルメが気に入ったのか話は尽きないが
、彼らが平成の福岡に訪れた第一の理由は観光ではなく、官兵衛ブームをより一層盛り上げるため。官兵衛ゆかりの地である福岡城では、観光客に演舞などのパフォーマンスを披露するほか、記念撮影にも応じ、おもてなしに励む日々を送っている。
「江戸までなんと
5時間で行ける!」(長政)と驚きを隠せない「すごく速い籠(かご)=新幹線」に乗っては江戸を始めとする他藩で福岡をPRしてくれているのだという。そんな中には苦労もあったと振り返る。
銀時 わしがこの時代に来て一番辛かったのは暑さじゃ。練り歩きでは「熱中症」というものにかかってしもうてのう、ずいぶん苦労したぞ。この時代の、この気温には甲冑(かっちゅう)はあっとらんかもしれん。地球温暖化というものが叫ばれとるらしいしのう。
――3人は、地域のイベントにも引っ張りだこ。
銀時 「大名祭」という催しでは、地元の人気の娘たち(=アイドル)と娘たちの合間にわしらが出るという…。見ておる者がなぜわしらが踊っているのか不思議じゃったようで、少し変な空気になったこともあったんじゃ。
――「飛行機なる鉄の鳥」では危うく…
官兵衛 江戸での演舞に向かうため、飛行機なる鉄の鳥のようなもので参ったときの話じゃが、演舞用の刀を持ち込む際に現代の警察というものにな、取り調べをされてしもうてのう。
長政 まぁ、難なく終わったんじゃがのう。怪しいものと思われてのう。
官兵衛 「頑張ってくだされ」と言われて送り出されたんじゃが、やはり疑われはするのう(遠い目)。現代は物騒なものがおるからのう。
――「電車という鉄の籠(かご)」では…
長政 わしの兜(かぶと)は電車や地下鉄というもの鉄の籠(かご)には向いておらんようじゃ。輪っかが付いておるじゃろう、あれによくひっかかってのう。捕えられた何かみたいになってしまうこともけっこうあるぞ。
■武将の弱点は現代女性?
――生涯、妻・光姫ただ一人を正室に迎え、愛し続けた官兵衛だが、「美人が多い街」と言われる福岡の現代の女性にはタジタジ?
官兵衛 わしは生涯、正室は一人しか持たんと決めておる。一人の女性しか愛しておらんから、他の女性は目に入らぬ……が!!!(声を大にして)それでも福岡の女性は他藩に比べて非常にきれいな方が多いのう。
銀時 きれいな方が多いが、昔と違って肌をさらけだすという…
長政 おお、あれは驚いたな。
銀時 変わった着物を着ておるのう。
長政 こちらの時代の海に行ったんじゃが、皆が裸同然の格好でおったから、目のやり場に困ってしもうてのう。
銀時 それに女性が元気じゃ。
長政 昔は男の後ろを歩くみたいな時代じゃったがのう、今は女性も頑張っておる。この社会を盛り上げておるというのは、わしらの時代には考えられないことじゃからのう。
官兵衛 むしろ女性がひっぱっておると言うてもおかしくないのう。
――平成の福岡をたいそう気に入った様子の3人だが、現世に滞在する予定は来年3月まで。やはり、住み慣れた福岡が恋しくなっているのか、武将らしからぬ弱気な一面も。
長政 もっとおってくれという声も聞くから、滞在は延びるかもしれんが、無事に帰れるか心配じゃ。向こうの時代では、わしらがおらんくなって今は大騒ぎしておる頃じゃからのう。もう、諦められておるかもしれん…
官兵衛 わしらがいない、黒田藩をだれが引っ張っておるのか…
――福岡のこれからに期待することは?
官兵衛 福岡の街を歩いていても、わしのことを知っておる者はそんなに多くはおらんから、大河ドラマでわしの事を知り、より福岡の事も知ってもらい、他藩から福岡に遊びに来てもらうくらいにわしらが盛り上げていければよいかと思うぞ。
長政 この勢いに任せて福岡城がよみがえると良いなと思っておるぞ!
――「ザ・歴女」な女子中学生3人組に黄色い声援を贈られ、照れてはにかむ表情を見せる一方、外国人観光客に「普段着か?」と英語で追及され、「413年前から来たと言っても信じてもらえなかったんじゃ」と悩む姿がとってもチャーミングで印象的だった3人の武将たち。そんな憎めない神出鬼没な「福岡黒田武将隊」。より一層の活躍に期待したい。
取材・文/編集部 秋吉真由美