特集

「博多・天神落語まつり」が10周年
プロデューサー三遊亭円楽さんにインタビュー

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■協会の垣根を越え、はなし家が集結

落語まつりを前に、夏に開かれる落語会「秋まで待てない落語会」。今年も福岡市民会館(天神5)で7月に開かれ、公演前には恒例となった公開記者会見が行われた。10回目の節目であることにちなみ、プロデューサーの円楽さん(五代目円楽一門会)はもちろん、上方落語協会から笑福亭鶴瓶さん、落語協会から柳亭市馬さん、落語芸術協会から瀧川鯉昇さん、落語立川流から立川生志さんという、落語5大団体から選りすぐりのメンバー5人が参加した。

「東西、協会の垣根を越えて集まることができる会はここだけ」と市馬さん。「10年というのは一口で言えることですが、大変なことで。誰と誰を組み合わせたらお客さんが喜ぶだろうとプログラムを作ってくる円楽師匠の努力は…なかなか面と向かって言えませんけど、ごくろうさまです」とねぎらう。

市場さんは大分県出身。「熊本や大分の地震や大雨など災害も多く心配だが、私たちにできることは一生懸命芸をして笑っていただくこと。少しでも皆に喜んでいただけたら」と話す。

鶴瓶さんは「とにかく、はなし家が集まるとめちゃめちゃ楽しい。年1回でも、上方や江戸が合同で集まることは少ないのでめっちゃ楽しい」と笑顔。「福岡という街は食べ物もおいしいし、打ち上げばっかしてますね」と観客を沸かせた。「ずっと続けてほしい。一時ちょっとダメになるかなと思ったけど」と円楽さんの不倫騒動をチクリ。会場の大拍手に「待ってたみたい」と笑わせた。

鯉昇さんは「毎年呼んでいただいて、楽しみにしている。ただ一つだけ。近すぎるんです。東京からの距離が」となぜか不満げ。「私、今日含めて、全部日帰りをさせられていまして。できれば23泊、ゆっくり過ごしたい」と食の宝庫・福岡での夜を満喫できずに後ろ髪引かれる思いで帰っていたことを明かし、観客の笑いを誘った。

福岡県出身の生志さんは「1回目から声をかけていただいて、出席率100%」と声を張る。「福岡出身なので、ほかの仕事を押しのけてでも出ないと」と笑い、「今年も先輩方に負けないよう、がんばりたい」と意気込みを見せる。

■プロデューサー・円楽さんインタビュー

今年のパンフレットに踊る「日本最大 東西落語 夢の祭典」の文字。「本物になりました」と会見で明かした円楽さん。プロデューサーとしての10年について話を伺った。

――10年、振り返っていかがですか?

あっという間ね。バタバタと3年ぐらいは試行錯誤しながらやって。苦労はない。スタッフにも恵まれて、裏方がよく動いてくれるので。アムの会長(主催する「アムトゥーワン」会長)との酒飲み話から生まれた会だけど(笑)。勢いだね。

――そのおかげで福岡に落語会が増えました。

うれしいこと。若手から皆、福岡という場所でもって落語会をできて呼んでもらって、本当にうれしい。雑誌でも落語特集が増えた。若い世代のファンにも入り口はどこでもいいから、落語会に迷い込んでほしい。好きなはなし家が必ずできるはず。

円楽さんは、プロデューサーとして出演者の調整や公演タイトルなどの「番組(公演)」作りを自ら手掛ける。

――師匠方からの反応は?

「楽ちゃん、よくやってるね。また呼んでくれよ」って反響ですよ。ほんとうれしい。歳暮や中元の売り込みもあるし(笑)。

――番組タイトルもユニークですが。

芸人をコンテンツととらえて、どういう組み合わせでパズルできるかなと考えるのはすごく楽しい。味のある人、華のある人を組み合わせて上手く作らないといけないのでね。

――当日の楽屋では、他の会場の演目が同時進行で貼り出されるとか。

「俺の方が上手い。よし本物を見せてやろう」なんて、楽屋ではそんな火花が散る。芸が磨かれていく。

――今年の見どころは?

団塊の世代と若い世代との融合。東西の聞き比べに加え、世代の聞き比べ、これが見どころ。どれも自信もってすすめられる番組。知らないはなし家も聞いてみてもらえれば。

――趣向を凝らしたスケジュール組みで挑む本番。自身の高座も終え、まつりが終わった瞬間は?

いや~、酒がうまいよ~!まあ、やってる最中も飲んでんだけどね。毎晩。毎晩。だいたい宴会。それも楽しみ。師匠方も参加してめちゃくちゃよ。日帰りの人も「よせよ~日帰りかよ~泊めてくれよ~」って人もいっぱい(笑)。

――これからの10年、目標は?

10年後にね、ここに呼んでる今の若手がも一つ大きくなりますよ。その繰り返し。僕らが70半ばになるでしょ。すると今の40代、50代が脂が乗ってくる。あるいは30代で今出てた奴らがもっと勝負かけてくる。出てなかった連中が出てくる。その繰り返し。みんなも育て合うが、観客も良いものを育てる責任があんのよ。だからアンケートでもなんでも協力して。11回、12回といろんな組み合わせを、どんなことをやってくれるだろうかと期待して組みたい。そんな思いでプロデュースをしていくのでこれからも期待してください。

「この期間は60数名のはなし家が福岡に来る。地元に残っているのは必要のないはなし家。東京で残っているのは(林家)三平くらいなもんで…」――記者会見でテレビのままに心地良い毒を吐く円楽さん。人気番組「笑点」メンバーを筆頭に、テレビに出演機会の多いはなし家が出る「番組」はチケットの売れ行きも早い。だが、東京や大阪に行かないとなかなか見られる機会が少ないはなし家が持ち込む、「生モノ」の高座の雰囲気もクセになる。ひょんなことから訪ねた番組こそ、声が良いはなし家、古典落語の脚色が斬新なはなし家など、お気に入りのはなし家を見つけられることもしばしば。そこも博多・天神落語まつりの大きな魅力だ。

「東京で残っているのは三平くらいなもんで…」と言いつつも、インタビュー中に聞いた「いや~、まだまだいるのよ。世間的には知られてないけど味のある人。呼びたい人がね」という円楽さんの言葉。ますます九州の落語ファンの耳を肥やしてくれそうでこれからも楽しみだ。

取材・文・写真/編集部 秋吉真由美



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