■街が動くとき、相談される人になりたかった
福岡大学人文学部文化学科を卒業後、秀巧社印刷会社を経てプランニング秀巧社に入社。1976年のタウン情報誌「シティ情報ふくおか」の創刊に携わり、編集人、発行人を務める。「ファッション誌を中心に、大の雑誌好き」と佐々木さん。本は捨てられても、雑誌は捨てられないとか。「今があるのは『シティ情報ふくおか』のおかげ」と笑うが「もともとタウン誌がやりたいわけではなく、異動でタウン誌を担当することになった」という。当時は編集や営業など部署も分かれておらず、記事を書きながら学生時代のバイトで得た人脈を使い、広告営業に走る日々だったと振り返る。「それを続けるうちにいろいろ、相談されるようになってきた。その時に要望に応えたいと思ってきた」。
ある人はグルメ、ある人は映画など、同編集部で同時期に働いてきたメンバーは、今それぞれが専門分野を持って頑張っているという。「(同誌は)学校のような存在」。「私の専門分野は『街』だったのかも」と、現在の福岡市市長室広報課課長を務める今までの過程、すべてがリンクされているようだ。
2000年に同社退社後、翌年4月より九州大学大学院比較社会文化学府日本文化社会専攻に入学、都市社会学を専攻する。修士論文では「共創のコミュニティ・福岡市における都心コミュニティの可能性」と題して、大名エリアの街の魅力について書いたという。2003年4月から同学府博士後期課程へ進学と同時に、福岡市の外郭団体・福岡都市科学研究所(現在福岡アジア都市研究所)で主任研究員を務める。オリンピックの誘致に関わる、シティプロモーションの依頼がきっかけで、2005年4月から福岡市市長室広報課に任期制の公務員として勤務。現在は2008年4月にリニューアルした福岡市ホームページの充実や市政だよりの制作を中心に手がける。
大学院入学について、「もともと勉強好きだった」と佐々木さん。「会社を辞めて全く別の業界に行きたいなと思った」。「今の仕事は『シティ情報ふくおか』で学んだことが大きい。(福岡市役所のホームページも合わせて)メディアを持っていることで、
さまざまな職種や肩書きの方たちと知り合えるし。(出会いをきっかけに)街が動くとき、あの人に相談したいな、相談してみようと思われる人になりたかった。相談され続けて今がある」という。
■「福岡」を言葉に置き換えたい
2008年
4月1日より、福岡市のホームページがリニューアルした。「他県の人に福岡の魅力を聞かれたときに説明しにくい状態だった。魅力を言葉ひとつひとつに置き換えておらず、写真もなく、形として渡せるものが必要ではないかと思った」と観光客も楽しめる内容のホームページを目指したという。
新しく取り入れた代表コンテンツは、「福岡市の魅力100 極私的(ごくしてき)福岡案内」と題した案内ページ。福岡にゆかりのある25人が案内人として登場し、「人がすすめる福岡」との切り口でそれぞれの「福岡」の魅力を4つずつ語っていく。
第
1回目に登場したのは、福岡ソフトバンクホークスの王貞治監督。「福岡の魅力とは」との問いにホークスの本拠地であるヤフードームや、博多ラーメン、空港が近いという交通の利便性などを挙げている。2回目には、サイバー大学学長・エジプト考古学者の吉村作治さん、3回目には、福岡の建物をキャラクターとして舞台に登場させており、福岡県外でも高い人気を誇っている劇団「ギンギラ太陽's」主宰の大塚ムネトさんらが登場。今後も、25人の目線で見た個性豊かな「福岡」の良さが現われるページとなる。「福岡に住む人はもちろん、県外の人、転勤で他県に引っ越した人などがどんな街なのかが分かる。今後の反応が楽しみ」(佐々木さん)と期待を寄せる。
■あなたにとって福岡とは?
――「地場のパワーをどう継続させるか」
「気がついたら外資、東京資本の企業が目立っている。天神の地場らしさをどうやって残していかなければいけないのか。外資でも東京資本でも地場と近づきながらの商売を考えてくれるなら良いが、(外資や東京資本に)依存するのが怖い」と福岡の未来を懸念する。「外資や東京資本と地場の間に入って、仲介役をするのが私の役目。そういう存在になりたい」とも。
「福岡の一番好きなところは?」との問いには修士論文にも取り上げた「大名」と「能古島」を挙げる。「この2つは福岡の宝!」と佐々木さん。「能古島は土地を買おうと思ったくらい」というほどのハマりようとか。場所以外では、「飲みに誘われるのに困ったことは無いかな(笑)。単に飲みにいく、食べに行くのではなくて、あの店のアレを食べに行きたいとか福岡の人は具体的。2,000円でおいしいものが食べられるとか、本当に店の水準が高い」。さらに、「福岡の街が好きな人が好き」と佐々木さん。「こんなに肩書きを気にしない街は特殊ではないかと思う。肩書きや会社の枠が好きな人にとっては、合わない街かも」とも。
■「天神エリアは顔がない街」
佐々木さんは「『大名エリア』は人に会いに行く街」だという。「用事が無くても美容室にいく人もいるなど、いつも立ち寄って話をしたくなる人がいる街という気がする。天神にはそれがない」。そういう「天神の顔」がない点を、リピーターが増えない理由に挙げる。「商品だけでつなぐのは難しい。平日に常連客をどうつかまえるか。どう顔を見せていくのかがカギ」とも。
広報としては「世界のマスコミが使用できる福岡の宣伝写真や文が自由に使える著作権フリーのプレスキットを用意したい」という。
福岡の良さがホームページという形で少しずつ広がりを見せようとし始めている今、天神の顔がここではどう作られていくのか、注目したい。
福岡を愛する人がまた、ここに1人いた。