特集

外食は年間のべ1,000軒
新グルメ雑誌「ソワニエ」編集長 弓削聞平さん

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■福岡グルメのカギは「ソワニエ」?

食の街・福岡に新たなグルメ雑誌「ソワニエ」が創刊した。ソワニエとは、フランス語で「上客」。店に愛される、また来て欲しいと思われる客を意味する。「ソワニエになることが高い満足を得る最善策」と話すのは同誌編集長を務める、聞平堂(渡辺通2)の弓削聞平さん。


弓削さんは、プランニング秀巧社(現シティ情報ふくおか)で広告営業、企画、ムック本の編集などを手がけた後、2000年に独立。まだブログが浸透していない2001年より、ホームページ「外食日記(現ソトメシの友)」を立ち上げたことをきっかけに、テレビ番組のコメンテーターなど各方面でグルメ関連の活動を展開。年間のべ1,000軒の飲食店を渡り歩き、人気グルメ雑誌「epi」の創刊時から編集長を務めたほか、うどん店「讃岐うどん大使福岡麺通団」の経営も手がける。


「新しい店を次々に渡り歩く人が多いことは幸せなことではない」と弓削さん。「店側は地に足の着いた常連を獲得したい。客も店の一部ととらえ、客を選んでいかなければいけない時代では」という。


そんな考えは、弓削さんはこんな苦い経験もきっかけになった。以前、弓削さんが取材したある店が媒体の効果で大盛況となるが、いつ行っても満員の店に常連客の足が遠のいてしまい、ブームが去ったあとも以前の常連が戻ってこず、その店は閉店間際にまで追い込まれてしまった。「これこそメディアの弊害。ブームに乗ってもその客が残ってくれればいいけど、引きとめられなかったら、ぽっかり穴があいてしまう」。


そこで、ソワニエは「話題店ばかりを転々とするのではなく、1つの店ともっと深く付き合っていきませんか」と提案している。「かかりつけの医者と同様、日ごろの状態を知っているからこそ、的確な治療が受けられる。サービス業ともそんな付き合い方をするべき」。そんな思いからソワニエは生まれた。


■ソワニエの極意

創刊号では、さっそくソワニエの極意を伝授。「いつも心に品格を」「電話予約を習慣にすべし」「とにかく店で過ごす時間を楽しむ!」など「初心者からソワニエをめざす10カ条」やソワニエの行動規範を紹介。「予約時間に遅れそうなら、店に連絡する」「忙しいときは他の客を優先してもらう」など、客としてのマナーを示している。「福岡の人に『ソワニエ』という言葉を知ってもらえれば」と期待を寄せる。


誌面は、「店のカタログ雑誌にしないことを心がけた」と弓削さん。「店の紹介は必須だが、知識、ハウツー、ニュース…。知っていれば、より食事が楽しくなる話を盛り込んだ」という。今年2月に宮古島から糸島へ移転オープンしたあるベーグル屋。その移転のきっかけになった人との出会い。シェフ4人による食材の生産地の旅など、店単独での紹介にとどまらない記事を集めた。食に関する雑学、コラムやレシピなどニュース性を持たせた誌面で「週刊誌のように、そのとき編集部が見つけた店やイベント、人、ムーブメントなどを紹介していきたい」という。


■ソワニエを増やしたい

「福岡の飲食業界が盛り上がるには、まずソワニエが増えることが大事」と弓削さん。「そんなに我慢するべきかと、ソワニエに賛否両論あるのも事実。でもそれは、通っていくうちに『先日はすいませんでした』とサービスメニューが出てきたり、予約で良い席を用意してくれていたり…。良い事として自分に返ってくるもの。得することも多いんですよ」。


「読者はソワニエを目指す。店はさらに勉強を続ける。勉強している店、人は上手くいく」と弓削さん。「この景気の悪い中、頑張っている店が多い。そんな店を応援したい」――。


取材・文/編集部 秋吉真由美




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