特集

天神の「人・ひと・ヒト」 Vol.2
財団法人 福岡アジア都市研究所 研究主査 山下永子さん

  • 0

  •  

■熊本のファッションに衝撃!

福岡県久留米市出身。高校まで久留米で過ごし、熊本大学へ進学。「小さいころから歴史も地理も得意で『社会科の山下』と言われていた」という。大学では都市社会学を専攻。「世の中のことを知らない高校生だった。親も教員で、将来は社会の先生かな…」とぼんやり思っていたが、大学進学とともに移った熊本でカルチャーショックを受け、山下さんが進む道に変化が。


「皆おしゃれ…」――。「細いパンツを履きこなした男子に、ミニスカが可愛い女子…。カルチャーショックでした…(笑)」。


「当時、私たちがいた久留米では「なめ猫」の余韻が残るまだまだヤンキーな時代。スカートなんて床に着くか着かないかのスレスレのロングで…(笑)。大学入学と同時に、ビームスが熊本に初めて支店を出したり、熊本は、福岡よりも東京への憧れが強く、東京に直結したおしゃれな街だった」と振り返る。「あまりにも驚いた地域の差や価値観の違いが面白いと思った」ことをきっかけに町に興味を持ち始め、ヒアリングのフィールドに大名の紺屋町と博多部を選び、手がけた卒論のテーマは「住民参加とまちづくり」という。


大学も卒業間近となり、就職活動も本格化。町への興味の延長で、空間作りやデベロッパーの仕事を探し始めるが、地元ではなかなか見つからず、銀行へ就職。しかし「性に合わず、1年で辞めた(笑)」。以前に内定をもらっていたという大手建設コンサルへ再就職を決め、上京する。主にリゾート開発など企画部門を担当。勤め始めて3年が経つころ、技術を持つ周りの人に触発され、技術を学ぼうと、福岡の夜間の専門学校へ進学を決め、再び福岡へ。勉強しながら、地元で都市計画プランナーとして地域開発やリサーチ業務などを手がけるが、「世の中はグローバル化らしい。これからは英語ができなきゃ」とまた新たな挑戦へ足を踏み入れ、なんと渡米。約1年間アメリカで英語とマーケティングについて学ぶ。


帰国後は、アジアにフィールドを移したリサーチ業務など、国際関係の業務を中心にこなす。そんな中、海外を含む、いろんな場所で会う人は全員がマスター以上。「私もタイトルを取ろう!」と奮起。タイミング良く、熊本大学の公共政策学修士が取れる社会人コース募集と重なり、大学院へ進む。博士号を取り、本格的にまちづくりに取組もうと思っていたときに現在、所属する福岡アジア都市研究所が募集していることを知り、応募。「前から憧れていた」という同社には、1度惜しくも試験に落ちるが、リベンジを果たす。現在、働き始めてちょうど2年となる。


現在は、同研究所が事務局を務める「アジア太平洋都市サミット」の業務を中心とし、アジア太平洋地域の都市間ネットワークの活性化をテーマに、福岡市と交流のある都市の都市政策情報の収集や、都市間の研究、共同事業などを手がける。同サミットの一環で、昨年の8月より、バンコクや大連などで行っている「We Love 天神協議会」メンバーらも参加している「まちづくり市民交流ワークショップ」では企画・実行責任者として活動している。


■「TVチャンピオン」に出場経験も!?

仕事のことを語り始めると熱くなるバリバリのキャリアウーマン・山下さんだが、その素顔は自他共に認めるほどのミーハーでもある。体中から溢れるエネルギーは仕事以上に、あるものに向けられている。実は山下さん、とある分野のマニアが集結し、毎回、真剣勝負が繰り広げられるテレビ番組「TVチャンピオン」のパン通選手権(1993年放送)で決勝戦まで勝ち抜いたという異色の経歴を持つ。


幼少時代より、パンが好きでよく食べていたという山下さん。大学時代、講義の一環で向かったアメリカでは5、6人のグループで西海岸からニューヨークを目指し、3日間ずつのホームステイを繰り返すという放浪の旅にでる。そこで世界のパンに出会い、好奇心旺盛な山下さんの心をくすぐっていく。大学時代も好みのパンを探しては食べ、東京での一人暮らし時代も暇さえあれば、パン屋巡りをしていたという。そんな中、偶然テレビで見かけた「パン通選手権」の出場者募集の告知。「これは応募しなきゃ!」――。


めでたく出演が決定。クイズはもちろん、パン食い競争などさまざまな戦いに挑んだ。予選以上に火花が飛び交う決勝戦では、堅いバゲットを引きちぎり、口の中を痛めつけながらも残念ながら、お手つきで優勝を逃してしまったというが、世界のパンを知りつくした経験と持ち前の根性で、決勝までトップの座を守り、見事な勝ちっぷりを披露していたという。


「興味があるものは、とにかく集める」。その「リサーチャー心」が思わずうずいてしまうのはパンのみならず。グリーンのパッケージに包まれた「ミントチョコ」にも好奇心旺盛な目が向けられた。旅行好きな山下さんが欠かさない、世界のミントチョコチェック。自身が手がけるエッセーでは、世界のミントチョコ分布図を載せ、熱く語るほどのマニアックぶりを発揮している。


そのほか、聞けばどんどん出てくる歴代の「○○にハマりました」との答え。「オーストラリアは制服王国!制服向上委員会というアイドルだってオーストラリアの制服を着ているほど」と熱弁するほどに詳しい「制服」や「ピーナッツバター」、「こぼしてもいいように部屋のじゅうたんはワイン色」と徹底した姿勢を見せる「ワイン」も大好き。


また、「アイドル」好きという一面も。過去には、おニャン子クラブの会員から始まり、青田買いは当然(!)というジャニーズも網羅。さらには最近までモーニング娘。の大ファンだったという。自宅には、モーニング娘。のデビューのきっかけとなった番組「ASAYAN」時代からのビデオテープがどっさり…と明かし、カラオケ18番は、デビュー曲の「モーニングコーヒー」。埼玉で行われたメンバー参加の大運動会では、メンバーと一緒に玉入れした経験もあるとか。


そのミーハーぶりと、興味があれば物怖じせず突き進む性格はもちろん仕事にも向けられている。


■福岡のPR力は天下一品

今年、イギリスの情報誌「MONOCLE(モノクル)」で「世界で最も暮らしやすい都市」ランキング第17位になんと「福岡」が輝いた。この劇的な福岡のランクイン入りの裏には山下さんの頑張りが大きくかかわっているという(本人談)。


同ランキングに多大な影響力を持つといわれているキーパーソンが北九州に来た際、山下さんは、「福岡市に来たことありますか?お暇でしたら案内しますよ」と声をかけ、同僚と一緒に博多から町歩きをスタートし、中洲を通り、アクロス福岡に入り、福岡タワーへと案内。イムズなどの商業施設や中洲のネオン街の店のセレクト方法など、博多満喫コースでおもてなし。「よっぽど楽しかったのか、2件はしごした(笑)」という。キーパーソンは、ほっぺにチューの記念写真を残し、機嫌よく帰っていったという。


その後、しばらくして「MONOCLE」の取材陣が福岡入り。「良さを伝えてくれたのかも」(山下さん)と振り返る。


福岡のために動く理由として、「やっぱり、地元・福岡と九州が好きだから」と「もったいないから」と山下さん。出張先では、少しでも福岡を知ってもらおうとパンフレットを大量に持参し、とにかく話しかけることに徹しており、「韓国に船で3時間で行ける都市で、東京に行くより上海が近い。そのほか、サイズや人口などを一通り説明する」という。帰国後、送付する礼状には福岡に対する印象などのアンケートを同封するなど、細かいところにまで気を配るほどの努力家。


■最高の褒め言葉は「スタイリッシュ!」

「この多忙な日常の中で一番好きなコトは?」と問うと「ワイン飲んでるとき。あと、語ってるときも好き」と山下さん。朝型で目覚ましは毎朝5時に設定。残業嫌いで、平日は毎日のように18時を過ぎたらワインに手をのばしているとか。土曜の午前中には、御用達の喫茶店で友人と英語の授業。日曜は、平日の弁当の仕込み。「これが私の健康…いや、スタイルを支えている」という「おから」「ひじき」「きんぴら」の3品目が黄金の山下式健康ラインアップという。「1週間分作り、冷凍保存。ご飯は雑穀米で体重を徹底管理!」とか。


ソフトクリームの3口食いに挑戦(もちろん、コーンまで。「マックのソフトクリームは2口でいける!」と山下さん)し、試合が近くなるとクラスメートを強引に引き連れて猛特訓をし、「クラスマッチの山下」との異名を取った高校時代。幼少時代から数々の伝説を残していると思われるスーパーウーマン・山下さん。山下さんについて、仕事場の同僚に話を聞いてみた。


「ムードメーカーだが、周りが楽しんでいるか配慮もされてる」と同僚の大関麻里子さん。「仕事に対してはすごく真面目で、関心事が多く、とことん研究。ほんとに『研究者』の方なんだなと感じる」(大関さん)とも。


仕事をしてきて嬉しかったことは「『(出張先のシアトルで)エイコ!あなたは今まで出会った日本人の中で一番スタイリッシュだわ!』と言われたこと!!」(山下さん)。バルセロナの人に「イタリア人みたいだと言われた」という。「福岡をプロモーションする目的のとき、私は(紹介される)相手にとって初めて会う福岡人。福岡の印象を少しでも良くするため、フレンドリーで洗練されているが、華美ではないスタイルを心がけている」という。「その(心がけの)集大成として、スタイリッシュと言われたのは嬉しかった」。


「今後の目標は?」――「人に警戒心を持たれない、と言われたことがある」と山下さん。「自分では分からないけど、そういった部分があるのなら、それは持ち続けていきたい。あと、自分プロモーションもかねて、チャンスと思ったら、断らず、さらに人脈を広げていきたい。人を育てたいので大学の先生にもなりたい」――。


「福岡を行ってみたいと思わせる街にする」――ことを目標に右に左に、海外にと日々、奮闘している山下さん。ただのキャリアウーマンではなく、数々のユーモアが散りばめられた引き出しをたくさんもっている点は感心するばかり。「分布は、豪州をボトムとするブーメラン曲線を描いている」と山下さんが断言するミントチョコ。好きなお菓子ではあっても、分布がどういった曲線を描いているのか…なんて考えたこともなかった(笑)。独特な目の付け所に完敗…。


文・写真/編集部 秋吉真由美

  • はてなブックマークに追加
エリア一覧
北海道・東北
関東
東京23区
東京・多摩
中部
近畿
中国・四国
九州
海外
セレクト
動画ニュース