特集

九州の「食」が一堂に
天神の真ん中で開催中の青空市「ふくおかマルシェ」

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■九州各地の産品が集結

「どうぞー、おいしいですよー」――市役所前のふれあい広場、赤いテントの下で飛び交う声。鮮やかな色をした旬野菜を前に思わず笑顔がこぼれる。昨年9月より始まった「福岡マルシェ」。会場には九州各地の生産者が大事に育てた新鮮野菜や果物、加工品など、福岡を中心とした九州の「味」がそろう。


「生産者や加工業者が直接、街に出ることがマーケティングの強化につながる」と西日本新聞社事業局事業部の北川秀紀さん。昨年度220、今年度は新たに70の生産者が参加登録している。自家製ジャムやベーグル、クッキーやケーキ、緑茶や調味料など、開店と同時に行列ができる店舗も多い。


「顔が見えるということが安心、安全につながる」(同)というが、ほとんどの生産者は接客が初めて。チラシやポップの書き方、商品の陳列方法、商品開発などいろいろなテーマで講習も実施し、フォローしている。「良い商品でも魅せ方で売れない場合もある」と北川さん。昨年は応援や育成の意味もかねて月4回程度行ったという。その結果、昨年の来場者アンケートでは95%以上が接客に満足、やや満足と応えており、リピーター作りにつながっているという。


■新たな販路拡大へ

バジルやトマト、甘夏など常時20種の野菜や果物をそろえる「糸島 はなちゃん農園」(糸島市)の吉井聡美さんは、「体に良いものを娘に食べさせたい」との思いから、6年前に無農薬で野菜を作り始めた。吉井さんももちろん、実店舗で接客をするのは初めて。「食べた感想など、消費者の意見を直接聞けることがうれしい。どんな野菜を求めているか分かることは最大のメリット」という。


「甘くておいしいですよー」――青空の下、客が次々と来店。吉井さんの額には汗が光る。「おすすめを聞かれたり、とても楽しい」と吉井さん。「暑いでしょーと優しい声もかけていただいてます。たまに差し入れを届けてくれる方も」と笑顔を見せる。生産者として、マルシェがいい刺激にもなっている様子で「マルシェでの経験を生かして、将来は産直の店を持てたらいいかな」とも。


宮崎県西臼杵郡高千穂町から出店している「むらの駅 おたに家」。自家製のそば粉や手打ちうどん、地頭鶏炭火焼などを販売している。専務の今村康薦さんは「高千穂は福岡からの観光客が多い。観光のついでに寄ってもらえるようにPRの場にできれば」と出店した。


 この日、店頭に立っていたスタッフの工藤学さんは「生産者と消費者の接点を持つ機会も貴重だが、生産者同士のつながりもできた。マルシェをきっかけに、一緒に新たな企画をしようという声も上がっていて、ビジネスチャンスも期待できる。励ましあえる関係も築けている」という。


■福岡発の味を広げる

マルシェは福岡の産品が全国へ広がるきっかけ作りにもなっている。バイヤーや業者も会場に訪れていることから新たな販路拡大につながったという声や、福岡会場での出店で手ごたえを感じ、東京や大阪会場へ進出した生産者、今年2月には福岡会場の名産を集めて、札幌会場で「ふくおかマルシェ」として出店するなど、福岡発の「味」が全国へ広がりつつある。


会場では、隣の店舗の野菜を使って、新商品を開発するなど生産者同士の横のつながりも生まれている。「消費者だけでなく全員が楽しんでいる様子」(北川さん)という。


秋から始まったマルシェも今は、すっかりじりじりと日差しが照りつける夏になった。夏場は暑さで来場者も減りつつあることから、福岡市環境局が行う「TENJIN SLOW NIGHT」とコラボレーションし、7月16日・17日には初企画の「夜のマルシェ」が行われた。


暑さも落ち着いた夜に、じっくり楽しめることから来場者数平均3,000人のところ、16日には5,000人、17日には6,000人を記録。特設ステージでは音楽ライブやサルサ、フラダンスショーのほか、エコワークショップ、マルシェの食材を使った「エコクッキング」の実演なども行われ、通常のマルシェとは違ったイベントで会場はにぎわいを見せた。「今後もタイアップ企画や、食を通じた観光PRの場としての受け皿にしていきたい」と北川さん。「食」を通じて、いろんな人のつながりが生まれている――。





文・写真/編集部 秋吉真由美





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