特集

「福岡パルコ」が開業
全154店、衣料品3割で差別化-天神に生まれる相乗効果は?

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■衣料品3割強、他施設と差別化

地下1階・地上8階建て、延べ床面積は約7,300坪。ついに福岡にもパルコが誕生した。2004年2月に岩田屋が67年の歴史に幕を閉じて以来、稼動していない状態が続いていた天神の中心地についに光がさす。


「オーバーストアとの指摘もありますが」――開業にともない開かれた会見での記者の声。「確かに天神は商業が充実しており、すでに消費者の満足度も高いものがある」とパルコ・平野秀一社長。「独自の調査で消費者はそれぞれ自分のショッピングコースを持ち、天神にない店を望む声が多く、福岡市内初店舗やオンリーワンショップを中心にテナント構成した」という。


出店総数154店のうち福岡市内初は104店舗。同館のコンセプトに合わせた全国初業態は30店舗そろえた。衣料品比率が5割の従来の都心立地型パルコに比べ、同店は雑貨や化粧品などを中心に構成、衣料品は3割強にとどめ、「他の施設と一緒に買いまわれる商品」に特化。他の商業施設との差別化を図る。入店客数は1千万人、年間売り上げ目標は110億円を見込む。


フロア構成は、地下1階=飲食・土産・食品・雑貨、1階=雑貨・ファッション・カフェ、2~3階=レディス・メンズファッション、4階=コスメやネイルなどレディスフロア、5階=インテリア・生活雑貨・コスメ・カフェ、6~7階=レディス・メンズファッション・雑貨・旅行・カフェ、8階=スポーツ・楽器・キャラクター雑貨・イベントスペース。「気軽に買いやすいテナント構成を心がけ、1階には衣料ではなく、買いやすいステーショナリーやコスメ、幅広い層が利用できるテナント中心に構成。フロアを商品で分けず、ランダムに配置し回遊性向上を狙う」という。


「福岡は地方の都市にしては、非常にファッション感度の高い街と認識している」と平野社長。「特に女性はカジュアルでおしゃれな着こなしの方が多い。東京を上回るファッションセンスといっても過言ではない」とし、ファッションイベント「福岡アジアコレクション」とのコラボ企画を実施。国内と韓国からモデル志望の女性を募る「シンデレラガールコンテスト」を行い、福岡のファッション感度の高い若年層のほか、アジアへの訴求にも力を入れた。「福岡は、九州全域とアジアの広域からの集客が見込める。コンパクトで将来性あふれるマーケット」。8階には、アジアからの観光客を意識してキャラクター雑貨「天神キャラパーク」も。「出張で訪れたビジネスマン、アジアからの旅行者の取り込みも目指す」。インフォメーション、館内のデジタルサイネージ(電子看板)は韓国語・中国語にも対応する。


■天神に来た相乗効果の波

各商業施設はパルコ効果による「流れ客」の増加に期待大だ。かつてその地から移転した岩田屋(天神2)は「旧岩田屋本館があった、天神のシンボル的一等地。久しぶりに行った店内には深い感慨があった」(販売促進担当の千綿文さん)と振り返る。「パルコ出店は確実に天神の魅力アップにつながる」とし、「パルコ目当ての客をどう取り込むかがカギ」と加える。オープン直後は、パルコのメーンターゲット層と重複する同店の2階フロアが前年比130%に推移。パルコプレオープンの17日以降、来店客数が20%、売り上げは10%増を記録したという。


大丸・福岡天神店(天神1)もプレオープンが始まった17日~22日までの連休の売り上げ、来店客数ともに前年比約10%増を記録。「回遊性向上が見込める。相乗効果に期待」(広報担当の倉光誠さん)としている。


三越・福岡店(天神2)も17日~22日の売り上げは前年比約120%、来店客数は約110%。「西日本唯一の店舗が多数そろう地下2階食品売り場には行列も見られた。パルコ目当ての遠方からのお客様が多いようだ」(広報担当の森山ミキさん)と分析する。


■地元は歓迎、今後の天神は?

「祝 パルコオープン」「よきライバルとして、よき友として」「おかげさまで天神が、いっそう元気になりました」――グランドオープンの2日前、天神の14商業施設がパルコの福岡進出を歓迎する懸垂幕を一斉に掲げた。


「統一したデザインの懸垂幕に天神の一体感を感じる」と福岡パルコの山木知行店長。パルコの隣のソラリアステージは「おとなりさんって、呼んでもいいですか」、向かいの天神コアは「お向いさん同士、天神を盛り上げましょう」と温かいエールを送る。熱烈なラブコールに福岡パルコは「天神のみなさま、新入生のパルコです」と応えた。


「最近の天神離れと言われていた天神集客減少が緩和し、南に移動した流れは北に戻るが、天神の回遊性が拡大するのでは」とイムズの常務取締役・マーケットプロモーション部長の平瀬豪宏さんは分析。WeLove天神協議会事務局の平井さんは「天神の顔の一つである天神交差点の一角がにぎやかに。久しぶりの商業施設開業で、他の施設や飲食店への相乗効果が期待できる」と話す。今後の協議会の活動としては「可能であればベビーカー貸し出し、コンシェルジュ会議への参画など連携を強めていきたい」としている。


パルコ・平野社長も「予想以上の歓迎ムードで、皆様のご協力をいただきながらオープンにこぎつけることができた」と話す。「街の活性化にも積極的に協力していきたい」と意気込みを語った。




近年のカフェブームや大型雑貨店「天神ロフト」の進出など、来街者の中心軸が今泉、薬院方面へと南に傾きつつあった天神地区。福岡パルコの出店で、誰もが北への集客が復活すると期待を口にする。この経済状況下、来春の新博多駅誕生も控えた今、各商業施設は相乗効果を狙って団結するしかなさそうだ。


かつては待ち合わせの定番スポットで活気が溢れていた旧岩田屋前――。開店準備が着々と進み、知らぬ間に白い外観には「PARCO」の文字。一等地ならではのオーラを取り戻していく姿に期待感が膨らんだ。カラフルな商品が並ぶショーウィンドウ前は皆、足取りが軽い。さらに充実した天神の今後が楽しみだ。





文・写真/編集部 秋吉真由美

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