特集

天神の各百貨店、福袋商戦へ
巣ごもり、インフル、阿修羅ブームまで影響したその中身は?

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■巣篭りブーム、堅実福袋へ

三越・福岡店のオリジナル「天神スタイル福袋」は「量ではなく着まわしが利き、春まで使えるものを厳選した」と営業統括部・行武一博さん。40代の女性を想定し構成した。福袋にはダウンコートなどがアウターの定番として入ることが多いというが、今年は女性らしさをテーマに約5年ぶりにウールコートをそろえたほか、ロングカーディガン、タートルネックカットソー、ストール、手袋の計5点をオリジナルのトラベルバッグに詰めた。また、最高1万円のグルメカタログやネイル・ハンドケアチケットなどの「当たり」も込め、運試しのワクワク感も演出。約5万円相当で価格は1万500円。昨年は2,000個そろえたが、今年は数量より質を重視し1,000個限定とした。


オリジナル福袋のほか、パジャマやパーカーなどの部屋着セット「寒い冬はお家でリラックス福袋」(5,250円)や「家呑み用に」と曲げわっぱの弁当箱、タンブラーをそろえた「こだわり酒器セット」(1万500円)など「巣ごもり傾向にある今、家でリラックスできる商品を中心に選んだ」という。各売り場バイヤー36人が各1企画を持ち寄った福袋もそろえ、約2万個を用意する。


企画福袋の価格帯も昨年より低く設定したほか、昨年同社全体で実施した体験型の夢福袋も今年はなし。「豪華クルーズや家などのバブリーな商品より、今年はより生活に密着した実用的なものが求められている」という。


■巣ごもりに加え、新型インフル流行の影も

大丸・福岡天神店は初めて、福袋のウェブ販売作戦に出る。販売促進部・伊藤敬一郎さんは「新型インフルエンザの流行や不況で外出を控える人が多い」と分析。約15種類の福袋がウェブ上でも購入できるシステムに。すでに一部商品は購入を終了しており「アクセスを分析すると深夜の購入が目立つ。それだけ忙しいのでは」と話す。


また、新型インフルの感染を懸念して外出を控える妊婦を対象にした新生児用の福袋をウェブのみで展開。来年1月2日より販売を開始する。「今後はウェブ展開も重視していく」と期待を寄せる。


オリジナル福袋はやはり「巣ごもり」がテーマ。「急な外出でも使える」ガウンやルームシューズに加え、小説「私は1本の木に恋をした」の福岡市出身の小説家でアーティストの沙真(さちか)さんが手がけた博多織の献上柄をモチーフにしたタンブラーなどを、kitson(キットソン)から人気に火がついた今年のトレンド「スパンコールバッグ」に入れた計5点をそろえる。価格は例年の1万円から大幅に値下げした昨年の8,400円をさらに更新し、6,000円の最安値で挑む。


同店は「この時代こそ夢を」と、水族館「マリンワールド」でイルカと一緒に泳ぐことができる体験型や人気ヒーロー「ウルトラマンメビウス」が家にやって来る企画福袋も登場。食品を含め1,050円から約2万5千個をそろえる。


■福袋にも仏像ブームが

岩田屋本店では今年7月、九州国立博物館で行われ人気を博した「国宝 阿修羅展」の開催時、6万3千円という高額にもかかわらず、同店で販売し約2ヶ月半で98体を売り上げた阿修羅像を大胆にも福袋企画へ投入。阿修羅像のほか、弥勒菩薩、恵比寿、大黒の4体を10セット限定10万円で販売する。「来年は『平城遷都1300年祭』もあり、まだまだ『和』ブームが続く」(営業推進部・北村麻由さん)と企画した。


同店オリジナルの「福ふく福袋」は商品点数を昨年より3点増やし、6万円相当の計9点を入れ1万円で1,000個販売する。ダウンコート、セーター、ハンドバッグのほか、「マフラーや手袋など外出用が多かった昨年とは対照に今年は腹巻きやパジャマなど家でリラックスできる商品を選んだ」と北村さん。同店も「巣ごもり」がキーワードだ。「新春で生活用品を一新する人も多い」とキッチンマットや人気タオルブランド「今治タオル」も入れ、40代以上の女性をイメージして構成した。


また、来年の干支「寅」にちなみ、大吉(とらふく刺身)から末吉(ふく茶漬け)までのいずれかが入るおみくじ要素も。さらに同店が今年11月に復刻販売させ、人気を集めている福岡出身の童画家西島伊三雄さんの「博多いろはかるた」もダブルチャンスとして10個に1個、計100個を入れた。


「物だけではなく、付加価値も提案したい」と体験型も充実。「自分磨きブームでもある」とカルチャーセンター「岩田屋コミュニティカレッジ」の人気講座が福袋となって登場する。西中洲のフランス料理店「ルグルニエ ドゥ ゴウ」のシェフが購入者の自宅で料理をふるまう福袋も。「牛から寅へ」と干支リレー福袋と題した、佐賀和牛ととらふく刺しなどのコースをセットにしたグルメ福袋もそろえた。総数は約2万個。


見事に各店とも経済状況を反映した内容に仕上がった。各百貨店とも担当の口から出るのはそろって「巣ごもり」のキーワード。「家クリ」(家でクリスマス)に続き、めでたい新春も家にこもる文字通りの「寝正月」になりそうだ。昨年は元旦の夜から福袋目的の行列ができ始めたという。来年は「寅」の勢いとは正反対の、元旦の夜からパソコンの前に陣取る「家福袋」が流行の兆しか?



取材・文/編集部 秋吉真由美

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