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伝統工芸を「音」で伝える
「5D アーカイブデパートメント」

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■伝統工芸を「音」で伝える

九州朝日放送とKBC映像による福岡発アイドルグループ「LinQ(リンク)」を起用した番組制作がきっかけだ。普通のアイドル番組とは違って、地域に貢献できるものを目指す中、制作会議で「伝統工芸の音」と「ダンス」を組み合わせて「曲」にする案が出たのだという。「ヒントは映画『座頭市』。鍬(くわ)の音を使った畑仕事のシーンが印象的で」。音と時間軸を合わせた「5次元=5D」を発信するプロジェクト「5D ARCHIVE DEPT.(ファイブ・ディー アーカイブ デパートメント)」として始動した。

早速、音選びに着手。「工房にいろいろな音を聞かせてもらいにいった。交渉しても楽器じゃないと断られたものも」と振り返る。使う音は「博多織」「八女の和紙」「豊前の神楽」「小石原の唐臼」「大川組子」に決まった。

博多織の杼(ひ)で横糸を通し、筬(おさ)を打ち込む音、八女和紙の紙を漉(す)く、チャポンチャポンという音、大川組子の木片に切れ込みを入れる音や薄く削るカンナの音…それぞれの「音」に地元のアイドル、地元の高校生から成るダンス同好会メンバー、アーティストらがダンスで華を添え、福岡出身のアーティスト・ももちひろこさんが詞、同じく福岡出身のSHiNTAさんが曲を付け、制作期間約4カ月で完成にこぎつけた。

告知はほとんどせず、昨年4月の平日深夜に毎日放送。視聴率0.1%以下の番組が多数を占める時間帯にもかかわらず、4%の数字を弾き出したという。

さらに、この作品が持つ「地域振興コンテンツ」の可能性が評価され、アートやエンターテインメント、アニメーションなどの優れた作品を表彰するメディア芸術の総合フェスティバル「第18回文化庁メディア芸術祭」では新人賞を受賞する快挙を達成した。

■良さを知るきっかけに

「それぞれの音に最適なマイクで録音するのにも一苦労」と香月さん。「音が曲にはまるか心配だった」というが、「熟練した職人のリズミカルな技から生まれる音は、あまり手を加える必要はなかった」という。「豊前の神楽」編では、神社から時間指定で収録の許可が下りたものの、収録中の音量が近所迷惑になる懸念もあったが、収録が始まるや否や近隣住民がそばで見学目的のジンギスカンパーティーを始めるハプニングも。「一緒に飲まんねと言われ、地域の方との交流もできた」と笑う。

映像の冒頭では、未来から来たというキャラクター「響・ガーネット」がナビゲーターとして登場する。「『郷土の音が響く』ことが名前の由来」と香月さん。福岡のサブカルチャーと伝統工芸を海外へ発信しようと福岡県と市が合同出展した、仏・パリで昨年7月に開かれた「ジャパンエキスポ2014」でも上映され、アニメなどのオタクカルチャー人気からか同キャラクターが好評だったという。

「地元の伝統工芸の良さを知るきっかけになれば」と香月さん。「今後は福岡に限らず、九州にエリアを拡大して、伝統工芸の素晴らしさを伝えられる続編を作っていきたい」と話す。

取材・文/編集部 秋吉真由美

5D ARCHIVE DEPT.

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